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2016年5月9日月曜日

古川博康さん「明治・大正・昭和に生きた実業家・古川鉄治郎、そして豊郷小学校」発刊

 旧豊郷小学校の建設に私財を投じた古川鉄治郎の孫にあたる古川博康さん(68)=兵庫県芦屋市=がこのほど、「明治・大正・昭和に生きた実業家・古川鉄治郎、そして豊郷小学校」を発刊した。
 鉄治郎は明治11年(1878)2月12日に犬上郡(豊郷町)四十九院村で父・半六と母・つねの次男として生まれた。五男二女の子だくさんの家族だったため、あまり裕福ではなかったという。明治20年3月に尋常科至熟学校(現・豊郷小)を9歳で卒業。その頃、伯父にあたる伊藤忠兵衛が古川家を訪れ、鉄治郎の丁稚を依頼したことから、鉄治郎は11歳で大阪に赴いた。そこで修行を重ね、商法の真髄を学び、やがては伊藤忠商店(現・伊藤忠商事)取締役、丸紅商店(現・丸紅)最高経営責任者として経済界で活躍した。
 本では序章「豊郷村における古川家の系譜」で古川家の歴史や鉄治郎の幼少期の生い立ち、第1章「実業家としての古川鉄治郎」で忠兵衛の元で実業家へと成長していく様子を詳細に紹介。第2章「古川鉄治郎がいま語る」では昭和11年1月に鉄治郎らが初代伊藤忠兵衛をしのぶため開催した座談会を鉄治郎の編集・発行で出版された「在りし日の父」の収録内容を公開しているほか、鉄治郎が昭和10年12月に全国ラジオ放送で商人道について語った内容もまとめている。
 豊郷小学校は明治6年5月1日に四十九院の唯念寺に成文学校が創設されたのが始まり。その後、尋常科至熟学校、至熟尋常小、豊郷尋常小、豊郷尋常高等小などと改称。そして昭和10年早春に鉄治郎は当時の校長に寄付を申し出、昭和12年5月30日にヴォーリズ建築による「東洋一の小学校」または「白亜の教育殿堂」と呼ばれる学校が竣工された。総建築費は42万3537円で、当時の町予算(3万7443円)の10倍以上だった。
 本では第3章「古川鉄治郎の為人を偲ぶ」で、二代・伊藤忠兵衛による昭和12年の豊郷小学校の落成式でのあいさつ文や、鉄治郎の弟・義三の兄への思いなどを掲載。第4章「豊郷小学校建築の寄附について」では建築に至る経緯などを、第5章「豊郷小学校創立100年に寄せて」では勤務した元教員の思い出話を載せている。落成時の校舎の写真など初公開の写真も見られる。
 古川さんによると、生前の鉄治郎を知るのは身内の3人ほどだといい「ほとんど知る人がいなくなった中で、鉄治郎の生涯、功績についてこの本で語り尽くすことができたと思う」と話した。本はA5判・210ページ。1350円(税抜き)。発行・公益財団法人・芙蓉会。販売は豊郷町観光案内所(旧豊郷小内)で。

 芙蓉会は5月15日~旧豊郷小学校2階で、本の出版を記念し「豊郷小学校旧校舎群 歴史展」を開く。名建築の歴史を昔の写真やパネルで展示する。入場無料。30日まで。

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